人生の記 尾崎元海

 五月十七日
 五月のなかば過ぎなのに気温が三十度、湿度も高い日でしたが、所用があり奈良県まで車で運んでもらいました。奈良公園あたりは三、四年前とは違い、平日なのに外国人の観光客でいっぱいでした。用事が済んでの帰り道、圓成寺えんじょうじというお寺に立ち寄りました。私は普段めったに寺へ行くことはありませんが、うっそうとした木々の緑に引かれて参拝することにしました。
 入ってすぐの庭には池があり鯉が泳いでいます。池の周りには石楠花しゃくなげの木がたくさんあり、池の隅には「あやめ」の青く美しい花が咲いていました。この花は姿も風情ふぜいがあり、深い紫色は気品があって心がなごまされます。寺の門をくぐると「かえで」の紅い色、「もみじ」の黄緑色、大きな石楠花の木に咲く濃い桃色の大きな花が目に飛びこんできます。その中の細い道を歩きながら数ヶ所のお堂を回り、安置されている阿弥陀如来、大日如来などの仏像を参拝しました。
 その中に仏師・運慶うんけいの二十代前半の大日如来坐像がありました。若き天才仏師の躍動する魂のひびきが充満した作品に触れた感動。これまで訪れた真言宗のお寺ではもっとも浄まった寺との一期一会いちごいちえ。良き気分転換となった奈良の一日旅でした。

圓成寺


 六月一日
 梅雨の走りのような雨模様が何日か続きましたが、今日はすっきりした天気になりそうです。朝にきたメンバーのファックスの一文に、この時期の風物詩の文章が載っていました。「今週末は田植えをします。田んぼに水がなみなみと張られ、苗が植えられた風景はとても豊かな感じがし、天地の恵みを実感します。天地万物の神々様に感謝申し上げ、田植えの手伝いをしたいと思っています」というものです。古来から日本列島ではお米の栽培を最重要視してきましたが、田植えの光景は日本人の心の原点を思い出させてくれるんですね。
私も小学生の低学年の頃、近所の農家の田植えを手伝いに行ったことがあります。当時は今のように農機具もありませんから、手で一つひとつ植えていったのを覚えています。その時の印象は、何と腰の痛い仕事だろうと思ったものです。世の中の動きがあまりにも速い時代には、田植えのような自然のいのちと一体化した響きの中から、生きることの根本を感じていくことが大事なんですね。

 六月七日
 つい先日、中米のグアテマラのフエゴ火山が大爆発をし、噴煙が一万メートルの高さに上がり、たくさんの死傷者が出ているようです。一ヶ月前には、ハワイ島のキラウエア火山の噴火の様子がニュースで報じられていました。噴火の期間が長く、治まるにはまだ二、三ヶ月かかるのではと言われています。噴き出している溶岩も大変な量で、住宅も数多く燃えたんですね。今日のニュースでも、溶岩が海底に流れ込み、有害ガスが大量に発生していると伝えていました。
 火山の専門家の話では、世界的に火山活動が活発化してきていると言ってるんですね。日本の火山についても、最近色々とテレビで取り上げられてますから、見た人も多いでしょう。数日前の新聞にも、二つの山で噴火した霧島連峰の地下に十三キロの長さで厚いマグマ溜まりがあるという記事が載っていました。
 それとは別に、BS3で放映した鹿児島のすぐ下にある鬼界きかいカルデラを、海の底にもぐって調査するという番組がありましてね。俳優(歌手)の滝沢秀明さん(タッキー)がスタッフと一緒に何ヶ所かの岩石を取るんです。その理由というのは、七千三百年前に大噴火したカルデラの真ん中に大きな溶岩ドームがあるというのが、神戸大学のチームによってわかったというんです。その溶岩ドームが大噴火の前の残りか、その後に新しくできたものかが大きな問題になるそうで、新しいものだったら大変な危険性があるらしいんです。
 岩石を調べて見ると、新しく成長したことがわかったわけで、チームリーダーの神戸大の先生は、噴火の確率は百年以内に一パーセントだと言っていました。一パーセントというと、最近の熊本地震と同じなんですね。七千三百年前には、九州に住んでいた縄文人が死滅し、大阪でも灰が約二十センチ積もり、関東近くまで降ったというんですから凄いもんです。カルデラの問題は九州には阿蘇山や桜島の北側や他にもありますし、北海道にも大きなものがあるんです。
 地震にしても南海トラフや北海道の東沖は、東日本大震災と同じ規模で、三十年間に七〇から八〇パーセントの確率だと専門家は言ってますからね。首都直下地震もあるでしょう。火山の降灰こうはいは昔と違って、二十センチも積もったら、インフラがパンクしますから、生活に重大な支障が出るんです。地震の被害もそうですが、経済的に大きな影響が出ますからね。
今日、土木学会が発表した南海トラフと東京直下の地震の経済被害と、その後の二十年間の経済損失は、二千兆円以上だというんです。こうなると、日本経済は世界の最貧国になるんじゃないかと、専門家の方が言っていましたね。
 もちろん警戒は必要でしょうが、私達には世界平和の祈りの、大難を小難にする最強の力がありますから、多くの人と一緒に光の輪を広げていかなければと思いますよね。
一般の国民はぼんやりしていますが、日本列島は地球の波動調整の中心の場であって、今後の活発な活動は科学的には当然あるでしょう。日本国民の多くの人々が自然界に感謝し、日本列島の調和と天命完うを祈らないといけませんよね。気を引き締めなければと思う今日この頃です。
(風韻誌2018年7月号)