
私のマンションのべランダからは、桜並木が目の前に見えます。毎年色々なことを感じさせて頂きますが、今年は二つの事柄に感謝を深くしました。
一つ目は四月十四日の「老子講義体覚会」の日、出掛ける前から雨模様で風もあり、桜の花はちょうど見頃なので、〝どうぞ雨風さん、手加減して吹いて下さい〟と祈る気持ちで家を出ました。帰ってベランダの方を見ましたら、花吹雪で花びらがたくさん散っていました。
ところが、何と朝には一つもなかった若葉がいっぱい出ていました。かわいい葉っぱさんは雨に濡れて生き生きとしていて、その凛とした姿から、生命力というものの力強さと尊さが、私の心に大きな感動を与えてくれました。
人間の勝手な想いで雨風が強く吹かなければ良いと思いましたが、桜さんはそんな想いとは関係なく、自然の法則に任せて雨を受け、新たないのちを生み出しているのです。「無言の教え」という言葉がありますが、まさしくその姿を見せられたのでした。
二つ目は、洗濯物を取り入れようとベランダに出た時のことです。洗濯物の上にちっぽけな桜の花びらが乗っていました。そのかわいい花びらを見ていると、思わず涙が出てきそうになりました。優しさと癒やしの響きが心に流れ入ってきて、只々ありがたく嬉しく感じるばかりでした。小さな生命が私を愛してくれているように思われ、洗濯物と一緒にしばらく部屋の中で、その花びらを見つめていました。春の時期の尊いひとときで、ありがたかったです。
(風韻誌2016年5月号)
追記 Jさんは神戸集会の代表を古くより担当され、2017年4月に他界されました。
下記のページで、Jさんが他界される直前に書かれた書のことが紹介されています。