訪問介護の仕事での体験 M.R

訪問介護の仕事での体験  M.R

 私は訪問介護の仕事をしています。最近、利用者さんでとても気になる方がいました。その方は五十才の女性で、六、七年前に若年性認知症と診断されたMさんです。Mさんはご主人の都合で、訪問介護からデイサービスへと移ってこられました。
 当初は周りの人と馴染めなくて、パニックになることも多く、大声で怒鳴ったり奇声を発したりされ、その度に周りの利用者さんやスタッフの空気が凍りついていました。
 そんな状況が続く中、スタッフは、Mさんの食事介護や声かけなど、様々な努力をし、私は〝五井先生、五井先生〟と心の中で唱えながら、介助を心がけました。すると、Mさんは少しずつ私に心を開いて下さるようになり、数ヶ月経った今では、Mさんの状態が一変し、明るく幸せそうな顔で笑われるようになりました。
 私が声を掛けると、とても懐しそうな顔をされ、ニコニコと話されるので、「Mさんは前川さんのことが相当好きやねぇ。本当に嬉しそうに笑われるわ」と、スタッフから言われ、私まで嬉しくなりました。
 〝五井先生のお陰だな、ありがとうございます〟と感謝申し上げると同時に、五井先生の称名をただただひたすら信じることの大切さを教えて頂いた体験でした。
(風韻誌2020年5月号)