戻ってきた財布　　岸田加容

　約三か月前に、娘の通う専門学校で盗難事件が相次ぎました。数人の生徒が財布を盗まれ、娘も最初に三千円を、別の日に財布を盗まれました。生徒の中で一人、動向の疑わしい生徒がいたようですが、何の証拠もなく無む下げに問いつめることも出来ず、警察に盗難届けだけ提出し、もう半分諦めていました。
　財布の中には現金と運転免許証、健康保険証、銀行のキャッシュカードなど大切なものが入っていたため、銀行や警察等に再発行の手続きで追われました。全ての手続きが済んだ頃、加古川警察から電話があり、娘の財布が届いているとの連絡がありました。もう諦めていたし、他の生徒の財布は見つかっていないのに娘の財布だけ見つかり、本当に驚きました。
　戻ってきた財布には、現金はなくなっていましたが、運転免許証、健康保険証、キャッシュカード、そして霊光写真が入っていました。私は思わず「五井先生が助けてくれはったんや！！」と叫びました。娘も、そして家族全員驚きと、何より感謝の気持ちでいっぱいでした。本当にありがたいことだと実感しています。
（風韻誌２０２０年３月号）