詩「水仙」 安井信子 2023.03.152024.07.07 玄関を開けて入るとほのかな香り 座敷に生けた水仙の芳香が漂っている 水仙は静かで控えめな花 六枚の可愛い白い花びらの真ん中に きれいな黄色の小さなカップを付けて シンプルが好きですと言っているように 茎も葉っぱもすっとまっすぐに伸びる まだ寒い春先から生き生きと香りは高く けれどもほどよい品よき匂いを漂わせ 目立たない庭の隅や草原の緑に咲く その花は黙って人の悲しみを清め 天に向かってまっすぐに立ち 天を信じてつつましく頭こうべを垂れる (風韻誌2019年3月号)